16 May, 2015

Dual Degree プログラム

14JのYです。今回はINSEADのDual Degreeプログラムについてご紹介したいと思います。



INSEADは現在、下記4つの大学院と提携したDual Degreeプログラムを実施しています。

・Johns Hopkins School of Advanced International Relations (SAIS): M.A. in International Relations
・Columbia University, Teacher's College: M.A. in Education Leadership
・MIT Sloan School of Management: M.S. in Management Studies
・Yale University: Master of Advanced Management

どのプログラムにも共通する特徴としては、2つの修士課程を別々に履修するのに比べてDual Degreeプログラムとすることで短期間で修了できるという点です。

このうち私はJohns Hopkins SAISとINSEADのDual Degreeプログラムに在籍しており、合計約2年半(2013年9月~2015年12月)でMBAとMA in Intentional Relationsの2つの修士号を取得する予定です。

まだDual Degreeプログラムは始まってから歴史が浅く、ウェブ上での情報なども限られていますので、私が自分自身で経験したことに加え、他のDual Degreeプログラム履修者から聞いたことをもとに、概要についてまとめてみました。他の学生の体験記についてはこちらこちらをご覧ください。


・Duel Degreeのカリキュラムについて

学習する内容については、それぞれの学校で規定通りの必修科目及び選択科目を履修していきます。この点、Dual Degreeプログラムに在籍している学生は、SAISでは本来卒業までに2年(4学期)かかるところ、1学期を省略して1年半(3学期)で卒業できます。一方、INSEADの方は他の学生と同じく規定の科目全てを履修する必要があります。

ただし、必修科目であっても内容が重複する場合には省略できることがあります。例えば、SAISでミクロ経済、マクロ経済、統計を履修している場合には、INSEADで必修となっている"Price & Markets"、 "Macroeconomics in a Global Economy"、"Uncertainty, Data & Judgement"の履修を免除(exemption)してもらえる可能性があります(尚、exemptionのポリシーは教授によって変わることがあります)。

なお、受験についてはそれぞれの学校に出願し、両方から入学許可を得る必要があります。


・学習内容、スタイルについて

学習内容や学習スタイルはINSEADとSAISで大きく異なります。INSEADは基本的には経営者を育てることが目的ですので、財務・マーケティング・組織行動などビジネスに直結する科目を、座学ではなくほぼ全てケーススタディやグループディスカッション等といった実際の経験を通じて学ぶスタイルです。

一方、SAISは国際関係の大学院ですので、国際政治・外交・国際経済・開発学などについて学び、学ぶスタイルもどちらかというと図書館で論文に向かい、レポートや宿題をこなしていくというのが基本です。グループワークやケーススタディを行うこともありますが、INSEADと比べると頻度はかなり少ないです。

授業の忙しさとしては、(両方忙しいですが)私はどちらかというとINSEADに軍配を挙げます。読まなければならない文献の量としてはSAISの方が圧倒的に多く、毎週数百ページのリーディングを課される授業もあり相当時間が掛かります。ただ、INSEADの方がディスカッション等に備えてより深く読み込まなければならないこと、また1年制のプログラムなので、月曜から金曜(時には土曜)まで授業がみっちり入っているし、イベントもたくさんあるので全く時間の余裕がありませんでした。ということで、SAISはまだ自分でコントロールできる時間が多いことを考えると、やはりINSEADは本当に忙しかったなという印象です。


・キャリアについて

Dual Degreeの場合、2つの点でキャリアの幅を広げることができます。まず1点目は、INSEADがMBAとしてトップスクールのひとつであり、SAISが国際関係の大学院として世界のトップスクールのひとつだと評価されているため、ビジネスセクター、公共機関・国際機関、非営利セクター等、1つの学校だけでは得難い幅広いセクター・分野で魅力的なキャリアの機会があります。

INSEADにいると、ほとんど全ての世界的なコンサルティング企業がリクルーティングにやってきて、実際に多くの学生が採用されていますし、有名企業への採用の窓口も広がっています。例えば、マッキンゼーは世界のビジネススクールの中でINSEAD卒業生を最も多く採用しています。一方SAISでは、国際機関や各国政府、シンクタンク、NGO等を進路として選ぶ学生が多く(約半数)、それらの機関が採用イベントのため学校にやってきます。中でも、世界銀行では「SAISマフィア」と言われるほど多くの卒業生が活躍しています。

2点目としては、地理的にキャリアの可能性が広がります。INSEADはヨーロッパ、アジアでの就職に特に強いといえますが、SAISはアメリカの学校なのでアメリカでの就職に強いです。どちらの学校のキャリアサービスも一応世界中をカバーしていますが、INSEADはヨーロッパやアジア、SAISはアメリカに強みがあるため、両方を活用することで自分のキャリアの幅を地理的に広げることができます。

このように、Dual Degreeではセクターや地理的なキャリアのオプションが増やすことができます。実際に両方の学校に籍を置いて気が付いたのですが、どの学校にいるかによって入手できる情報やネットワークが大きく変わってきます。例えば、INSEADでは特にキャンパスがあるヨーロッパ・アジアでのキャリアに関する情報が豊富に手に入りますし、SAISは各国政府、世銀を中心とする国際機関、シンクタンク等に強いネットワークを持っています。

これらの情報やネットワークは実際にそのコミュニティの中にいないとなかなか手に入らず、しかも採用情報が外部に出ていなかったり、外部に公開されていても実は内々に決まっていたりすることがあるようなので、そのコミュニティの中にいることでのメリットが大きいといえそうです。

なお、INSEAD/SAISのDual Degreeを修了した人で私が知っている範囲では、3名が民間企業(コンサルティング、投資銀行、製薬企業)、1名がアメリカ政府、1名が医療機関に就職しています。


・ロケーション

INSEAD/SAISのDual Degreeプログラムでは、合計4つのキャンパスを経験できます。INSEADではフォンテーヌブロー・シンガポール、またSAISではワシントンDC・ボローニャ(イタリア)の4ヶ所です。これに更にINSEADが提携しているWhartonやKelloggとの交換留学まで加えると、5つのキャンパスで学習できます。

私の場合は、フォンテーヌブロー(INSEAD P1-P2)→シンガポール(INSEAD P3-P5)→ボローニャ(SAIS Fall 2014)→ワシントンDC(SAIS Spring-Fall 2015)という順番で4ヶ所を経験しています。正直、2年半で4ヶ国に引っ越すというのはなかなか大変でした。ビザをそれぞれの国で合計4回取得し、家探しをして引っ越しというのをほぼ半年ごとに繰り返しました。大変なのであまりオススメはしませんが、飽きが来ることはありませんし、貴重な経験にあることは間違いありません。

以下、簡単に滞在してみた私の感想です。

フォンテーヌブロー:
パリ郊外にある森に囲まれた田舎町で、落ち着いた環境でゆっくり過ごせる。学校の外であまりやることがないので、学校内で特に仲良くなる。ただ、空港は近いのでヨーロッパ各地に旅行に行きやすい。個人的にはとても気に入った。

シンガポール:
ほとんど東京と変わらないような便利な生活を送ることができる。また、外でのイベント等も多く刺激が多い。ただ、私は暑さが苦手なため、常夏の気候はやや辛かった。

ボローニャ:
世界最古かつイタリア最大級のボローニャ大学を中心とした学生の街。学生が多いため活気があり、バーやレストランも多く、フィレンツェやミラノにも近いので楽しめる。ただ、逆に見どころが多すぎて観光気分になってしまうのが勉強する上ではやや難点。

ワシントンDC:
アメリカ政府機関、世界有数のシンクタンク、各国大使館、世銀・IMF等に囲まれて国際関係を学ぶ上でこの上ない立地。毎日のように各国閣僚クラス・大使や国際機関の幹部等を招いた講演などが行われている。ネットワーキングにも便利。先日、安部総理が訪米した際には演説を聞くこともできました。


・コスト

Dual Degreeの最大のデメリットは経済的・時間的コストです。基本的にそれぞれの大学に対して在籍している期間は学費を支払う必要があります(INSEADには1年分の学費、SAISには3学期分の学費です)。また、全て修了するまでに、普通のINSEAD生に比べると+1.5年、一般的な2年生のMBAと比べても+半年ほどの時間が掛かります。

ただし、一般的な2年制のMBAとを比べると、約半年の時間と学費を加えるだけで、MBAと更に別分野の修士号が取れるとも考えられるので、お得だということもできるかもしれません。私の場合は私費留学ですが、運良く両方の大学から一部奨学金を得ることができ、多少負担を軽くすることができました。


以上、Dual Degreeプログラムについてまとめてみました。ちなみに、おそらくINSEAD/SAISのDual Degreeプログラムに在籍するのは私が日本人で初めてのようなので、日本語での情報はかなり限られていると思われます。ということで、もし質問などありましたらご遠慮なくお問い合わせください。