24 January, 2011

INSEADの授業設計

こんにちは。11JのCelipです。

よく、受験勉強をしていたときに、「INSEADの特徴ってなんだろう? 戦略?マーケティング?」ということを必死に考えていました。INSEADでの4ヶ月が終わった今、P1、P2のコアコースにおける授業設計やそれぞれの授業内容を振り返ると、そこから導きだせるINSEADの特徴の一面が見えてきたような気がします。



皆さん十分ご存知かと思いますが、P1は5.5科目、P2は6.5科目と、たったの4ヶ月の間に合計で12科目の基礎科目を受けなければなりません。国籍を問わず、大部分の生徒にとってそれは苦しい4ヶ月となるようです。しかも、教えている内容は基礎的なことですし、例えばINSEADの会計の授業を採ったからと言って、会計士に匹敵する程の知識を得られる訳ではありません。また、金融の授業により、全くの金融の初心者が投資銀行へ転職できるまでステップアップするのも相当難しいでしょう。

ではINSEADはこのような環境で、私たちに一体何を得てほしいと思っているのでしょう?

一つ言えるのは、「正しい知識を基に、健全な企業経営、および、競争力のある企業創造を担う人材になること」だと思っています。

世界中において、企業のスキャンダルの多くは財務関連の不正処理から来ていることをご存知でしょうか? INSEADの各授業には、そういった不正の仕組みを理解し、まっとうな倫理基準を以てそのような経営に手を染めない、事前に防ぐ、という基本理念が根付いているのです。例えば、Financial Accountingではどうやったら収益の水増しができるようになるかがわかります。Managerial Accountingでは、どういう風に管理会計と報酬を結びつけると、部門長たちが不正を働くようになるかがわかるようになります。また、Organizational Behaviourでは組織が人の行動にあたえる影響への学びを深め、Business Ethicsでは「間違ったことは間違っている」と言えるようになるための環境づくりへの示唆を得ることができます。

この理念は、electiveコースをとっている今でも、脈々と根付いているんだなあと感じることが多いです。例えば、M&Aの授業の中では、EPS (Earnings per Share)という一時的な評価指標が、どれだけ経営者の間違った判断に結びついているか、その結果、世の中の多くのM&Aが競争力を得られず失敗に終わっているかを学び取ることができます。また、M&Aは起業後の早期成長に関わる重要な手段ですが、Advanced Corporate Reportingという授業では、こうした指標に惑わされずにM&A後に健全な会計処理をすることの重要性をしつこいくらい教えられます。

INSEADは、多様性が特徴であるだけあって、米コロンビア大学や英ロンドンビジネススクールのように、際立って金融が強い、という特徴がある訳ではありません。実際にINSEADの生徒としていると、本当にふわっとした学校なんだなあと感じます。ところが、INSEADの卒業生の多くは、卒業後、何らかの形を通してEntrepreneurshipに関わるし、校内ではビジネスアイディアについての議論で白熱している場面によく出くわします。もちろん、他のビジネススクールと同様、企業経営に関わる卒業生だって多々います。

もちろん「正しい知識を基に、健全な企業経営、および、競争力のある企業創造を担う人材になること」はINSEADの特徴の一つであり、全てではありません。受講する授業が何なのかによって、何が自分の強みになるかは変わってきます。しかし、INSEADでの10ヶ月を通して得られることの中には、こうした要素が多々含まれるということを一つ覚えておくと、進学するビジネススクール選びに役立つのではないでしょうか。