07 October, 2010

こんな授業もあります。

10DのJです。こちらはすっかり秋で、Fontainebleauの森も美しく色付きはじめました。
早いものですでにP4も後半戦、INSEAD生活も残り3ヶ月となりました。

さて、学生の本分であるお勉強=授業に関する記事があまりないことにいまさら気付いたのでいくつか紹介します。



ご存知のとおり、講義+ケーススタディというのがMBAでもっともオーソドックスな授業スタイルですが、P4では私はいくつかユニークな授業を選択しています。

(その1)Realising Entrepreneurial Potential (Professor : Timothy Bovard)

「新しいビジネスのアイデアなんて持っていないけど、どっちかというと平凡な人間だけど、それでもEntrepreneurになりたい!」という人のために、「だったら個人で会社買ってみようよ」という実習です。

買収先の探し方、買収プロセスから、買収後の経営課題、そしてexitまでケースなどを通じて学びます。が、どちらかというと授業での内容はオマケで、このコースのハイライトはグループプロジェクトにあり。

実際に自分たちで買えそうな会社を見つけてきて、資料を入手して調査して、出来るかぎり現地を訪問、現経営陣とミーティングもして、最終的にはinvestment proposalを作成、ベンチャーキャピタルなどの本物の投資家の前でプレゼンをすることになっています。

「個人で会社を買う」などという発想はINSEADに来るまで考えたこともありませんでしたが、特に欧米では事例も豊富にあるようです。最初は、「個人で会社買収するって言ったってそんなお金ないし、、、」とひよっていましたが、「本当に良い案件だったらスポンサーは見つかるはずだ」とのこと。ごもっとも。

会社の探し方の一般論は教えてくれるけど、それ以上の手助けは全くしてくれません。ブローカーに頼るもよし、電話をひたすらかけまくるもよし、とにかく自分の力で探してこい、と冷たく野に放たれます。私のチームもまだもっぱら会社探しに大苦戦中です。誰か、私らでよかったら会社売ってください、、、

実際に、このREPのプロジェクトを卒業後も継続して実際に買収に踏み切り自ら経営を始める卒業生も少なくありません。授業ではほぼ毎回REPの先輩である卒業生がやってきて、自分の経験を語ってくれます。もちろん、成功例も失敗例もあるのですが、倒産の経験なども率直に語ってくれて、実は失敗談のほうが勉強になったりします。

先生は、自分自身が起業家であり、個人での企業買収をいくつも経験している凄腕の人。

(その2)Negotiations (Professor :William Maddux)

タイトルそのまま、交渉についての授業、というか訓練です。

毎回の授業で、ランダムにペアまたはチームを組まされて、それぞれがケースのなかでroleを与えられて実際に交渉を行い、そのあとにフィードバックがなされます。

シンプルな1対1の交渉から、チームでの交渉、e-mailでの交渉、代理人としての交渉、三つ巴・四つ巴での交渉などなど色々なシチュエーションが用意されています。
想像されるとおり、なかには本当にイヤな性格の(笑)交渉相手とあたることもあり、頭にくることも多いのですが、それも含めて楽しい授業です。

実際に交渉上手になるには当然授業だけでは不十分でさらなる実戦訓練が必要なのだと思いますが、色々な文化・性格のクラスメートの交渉スタイルをいろいろな角度から観察できたことはとても有意義だったと思います。もちろん、自分自身の交渉スタイルの強み弱みを知ることもでき貴重な体験でした。

最終課題は、学校の外に出て行って、何でもいいから交渉して来い!とのお題。さて、なにをネゴって来ましょうか、、、

(その3)Psychological Issues in Management (Professor : Fernando Bartolome)

この授業は強烈でした。とにかく教授がとんでもないのです。

人前で決して使ってはいけない英単語が授業中に常に使われます。明らかにpolitically incorrectなジョークを連発します。日本の学校にこんな教授がいたら確実にクビになるでしょうし、アメリカでは訴えられるでしょう。実際、「politically correctとか嫌いだからアメリカで教えるつもりは全く無い」と自分で言い切ります。

内容としては、シラバスには"Listening Skills"、"How to Cope With Stress"、"Career Choices"と言った言葉が並びますが、マネジメントに即活用できるスキルや知識を身に付けるための授業では全くありません。

とにかく、MBAの他の授業とは目指しているものが全く違います。株主利益(彼の言葉では、"share-f**king-holder value(笑))なんてクソ食らえと言いますし、MBAではleadershipがやたら喧伝されているけれど自分から見たら世の中のビジネスリーダーなんて自分勝手で強欲な人種に過ぎない、とも言っておりました。

しかしながら、実は、相当な人気教授。
最初は、大半の学生がこのスタイルに戸惑い、教室を出ると「変な授業だ」と皆で笑いあっていたのですが、徐々にこの世界に引き込まれていきます。

最終講義は"Managing the Relationship between Professional and Private Life"というタイトルだったのですが、深く心を打たれる授業で、多くの女子生徒は涙を流し、スタンディングオベーションの後は、学生全員が感謝の言葉とともに握手やハグを求めに教授に近寄っていく、壮絶な幕切れとなりました。こんな授業は人生で初めてでした。

最後の授業はもはやpsychologyでも何でもないのですが(笑)、自分の心に一生深く残る授業となると思います。
内容は企業秘密。好き嫌いはあると思いますが、ぜひ自分で受けてみてください。

いわゆるオーソドックスな授業での勉強もいいけれど、こういう五感をフル活用する授業がMBAの醍醐味かと思っています。